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■第十八話 橋の上で…
二月末の寒い夜だったでしょうか。 とある有名な心霊スポットでの体験談となります。 この「路地裏」を立ち上げてコンテンツ充実の為に躍起になっていた頃、寝る間も惜しみ毎週のように探索に向かう時期があった。 自宅付近から徐々に遠くへ足を運び始め、神奈川某所、有名な橋に訪れたのは、残雪も所々に見受けられる寒い夜だった。 凍結した道路を緊張気味に走り現地に到着したのは深夜二時頃。 日中は、それこそ絶景のひろがる観光地であるこの地も、深夜となると周囲の漆黒の闇に橋が浮かび上がる不気味な姿を私に見せつける。 なおかつ深夜の、しかもシーズンオフの心霊スポットという事も手伝い、現地には私一人しか存在せず、緊張度は弥が上にも高まっていった。 とは言う物の、この有名な心霊スポットは、ＨＰ立ち上げ以前より訪れた事は幾度となくある。 そして特にコレといった体験もなく、そういった意味では安心していた事も事実。 何の躊躇もなく車を降り、早速橋の探索を始めたのだが…。 冬の山奥、しかも深夜である現地の気温は当然ながら寒い。 歩き始めて数分後には身体が震え始め、カメラを持った右手は次第に感覚が鈍くなって行くのが自分でもわかる。 しかし私は冬の探索が好きである。 この寒さがなせる独特の緊張感は、以前より好んで活用させて頂いている。 昨年及び今年初頭などは、頻繁に訪れたのを思い出す。 そんな緊張感のなか、橋の上を歩きつつ冷たくなった手で撮影する。 時折通り過ぎる車に、冷たい視線を感じ恥かしくもなるが、ほんの一瞬でも一人でなくなる事に安心を覚える。 そんな事を考えつつ、橋の半ばを過ぎた頃より周囲の雰囲気が一変した。 いや、周囲の変化ではなく、体調の変化と言った方が良いだろう…。 先程まで快調といっても、強ち間違いではなかった私の身体の、まず腹部が痛み始める。 キリキリとする傷みに思わず声を出す程だ。 「いて…いててて…」 などと何とも情けない声を、深夜の心霊スポットで上げる。 その後に訪れた個所は背中…。 腹痛で足を止め、下を向いている私の背中を 「ドンッ！」 と叩かれた気がした。 当然私は驚き背後を確かめる…しかし誰もいない。 錯覚だったのか…それとも… 腹痛は相変わらず続き、現地に到着した当初とは全く違う体調に悩まされつつも、その場から離れたい為か、再び歩き始める。 その場から何歩歩いただろうか、橋ももうすぐ終わりという所で再び背中に 「ドンッ！」 といった、激痛とまでは行かないが、若干の痛みを感じる程の感触が背中を走った。 今度は降りかえる勇気もない。 降りかえれば、とんでもないモノが見えてしまいそうで…。 その時、背中を誰かが押すかのような感覚が我が身を襲った。 そして次の瞬間、私はその場にうずくまってしまう。 確実に誰かが押している！ 見ていないのではっきりと断言できないのだが、どう考えてもそうとしか思えない感覚であった。 このままでは埒があかない…。 押される感覚を振り払う様に、その場を駆け足で離れる。 背中には、まだあの感触が残っている。 そして橋の先に辿りつき、後ろをようやく振り返る。 しかし…何もいない…何も見えない。 今までの感触のすべてが、まるで嘘の様に思えてくる程に何もない普通の橋が、ただただ真っ直ぐに伸びていた…。 それから数分後、再び探索を始めた。 相変わらず腹部はキリキリと痛いのだが、どちらにせよ再び橋を渡らねば帰る事は出来ない…。 「だったら撮影しながら帰ろう…」 そんな小言を、わざと声に出しながら撮影した数枚目の写真を帰宅後に見た時、このＰＣの前で背筋が凍りついたのを思い出す。 果たしてこの写真に写るモノから攻撃を受けたのか…私には分かる術もない。 しかし、私の体調が突然悪くなった場所と、写真に写った物体の位置はかなり近い。 真下といっても良いかもしれません。
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