【路地裏】【体験談トップ】【管理者体験談】【読者体験談】【作品投稿】 | |||||
■第十九話 神社の写真:その1 |
|||||
|
|||||
お客様から教えて頂いたスポットでの出来事。 吸い付けられるかのごとく、既に2回も訪れているスポットでの話だ。 「とても怖い場所なので是非」 と言ったコメントを、メールや掲示板で頂き (これは何時か行かなきゃな) そう思いつつも、何かと時間が取れずに延び延びとなり、漸く訪れる機会が巡ってきたのは、今年の暑い時期。 いつもの通り、子供が寝付いたのを見計らい、予め用意してあった地図や懐中電灯、そしてデジカメの入ったバックを肩に下げ玄関の扉を手にする。 「気をつけてね」 いつも通りの女房からの見送りの言葉。 かれこれ30回は聞いているだろうか…。 取り立てて気にもしなかったが後々考えると、胸騒ぎとも思える妙な感覚が起きた気がしないでもない。 「じゃあ行って来るね…帰宅は朝だと思う」 と女房に告げ玄関を後にし、車に乗り込んだ。 エンジンを掛けエアコンを全快にし、いつも通りステレオに入っている、お気に入りのテープを聴きながら自宅の車庫から現地に向かう。 そう…いつも通りだ。 自宅から北方面へ向かう時に使う道を、無意識に使うのもいつも通り。 やや大きめのボリュームで音楽を聴くのも、いつもと何ら変わらない。 しかし… 車を走らせて5分ほどだっただろうか、無意識のうちに口ずさみながら聴いていた音楽が、音程を変え、妙な音を奏で始めた。 と、次の瞬間 「ブツブツ…ブツッ!」 と、異様な音を最後に、全くの無音となってしまった。 いったい何が起きたのか即座に理解は出来ず、闇雲にテープを巻き戻したり早送りしてみたりする。 しかしテープが動く気配が全く無く、慌ててカセットデッキから取り出し、そのテープを見た時、何が起きたのか漸く理解できた。 テープが絡まっているではないか…。 何故だ…取り立てて異常な使い方はしていないはずだ。 いつもの通り、予めセットしてあったテープを聴いていただけなのに…。 考えても始まらないので、とりあえず他のテープをセットし、昂り始めた気持ちを抑えようと心掛けてみる。 そして音楽に没頭しようと、流れる曲に集中してみるも、ものの数秒で私の脳裏は、先程の絡まったテープの事に支配される。 「何故なんだ…」 ごく普通の毎日での出来事ならば、このハプニングも 「なんだよ…メーカーにクレームだな」 程度しか思わない程の些細なものなのだが、“心霊スポット”に向かう最中の出来事だけに、妙な胸騒ぎを覚えてしまう。 そして、これは私の場合に限っての事なのかもしれないのだが、出始めにアクシデントのある時は、あまり良い事は起きない。 もっとも“必ず”と言ったモノでもないのだが、良い結果となった事は、あまり多い方ではないのは確かだ。 このまま何も起きなければ良いのだが…。 車で40分ほど走っただろうか…。 そろそろ目的のスポットも近づいて来たはずだ。 しかし初めて訪れる場所であり、その事も考慮すれば、あと2〜30分はハンドルを離せないであろう。 とりあえず車を止め、近くにあった自動販売機で好みの缶コーヒーを買い、車にもたれながらそれを飲む。 相変わらず気持ちは昂っている。 いや、それどころか自宅を出た時以上に昂っていると言えるだろう。 それには理由がある。 先程、「テープが絡まった」とは説明た。 その後、新たなテープを挿入し集中こそ出来なかったが、再び音楽を聴いたのも先程記載した通り。 問題なのは、その一連の行為を、4回も繰り返した事。即ち たかが40分のドライブで、計4本ものテープが絡まってしまったのである! 「そんな事って、あるのだろうか…」 そんな馬鹿らしい事をコーヒーを飲みながら考えていた。 現に、この40分の間に経験したと言うのに、未だに夢の様に思えてしょうがない。 そして…これから目的地へ向かって本当に良いのだろうか…。 余りにも幸先の悪い今回の探索に、ただならぬ恐怖心が芽生えつつも、飲み干したコーヒーの缶を販売機脇のゴミ箱に、まるで不安感を払い除けるかのように投げ捨て、車に乗り込み自宅方面とは反対方向へ進むのであった…。 その2へ続く
【その2へ】 |
|||||
【路地裏】【体験談トップ】【管理者体験談】【読者体験談】【作品投稿】【その2へ】 |