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■第十九話 神社の写真:その2 |
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自動販売機の前で、さんざん悩んだ挙句、結局目的地へ向かう事になった。 「ここまで来たのに帰ってしまうのも勿体無い」と言う思いもあるし、単に「見てみたい」という原始的本能もある。 しかしその一方で、「止めておこうかな」と言った考えも確かにある。 決断力のない証拠であり、私の欠点とも言えるであろう。 一度決めた事に対し、何の迷いもなく邁進できる人々を羨ましく思う。 私には、それがどうも苦手であり、それは幼少の頃から変わっていない。 学級委員を勤めたときも、修学旅行の班長を勤めたときも、合唱の指揮者を勤めたときも、必ず心の奥底で 「本当に良いのだろうか」 と言った思いは常に付きまとっていた。 しかし当然、「やってみたい」という思いも心に強く存在し、その両極端な思いで複雑になって行く思考は独特の感覚があり、今回の探索も、それと似たような心境であったような気がする。 目的地へだいぶ近づき、信号待ちの際に地図で確認する。 目印として、某公園が広がり、その公園よりホンの数キロ先に、目的地が存在する事は事前に分かっていたので、公園名を確認してみる。 やはり間違ってはいないようだ。 距離からいって、あと数分で到着する…。 どの心霊スポットでもそうなのだが、この「もうすぐで到着する」と思った瞬間は、いつも心臓が「ドキン」と大きな鼓動を打つ。 「緊張感が高まる」とでも言うのでしょうか…。 今回の鼓動は、いつもより大きかったようにも思える。 更にを走らせ、とある信号を左折すると、その先には広く薄暗い道が真っ直ぐに伸びている。 その直線の途中を右折すれば、目的地の神社が存在するハズだ。 しかしその右折地点が、いまいちはっきりせず、後は勘で行くしかない。 あからさま自信なさげに車をゆっくりと走らせ、周囲をきょろきょろと探っていると、その“ノロノロ運転”が祟ったのか、信号に捕まってしまう。 後続車や対向車は全くなく、そのまま無視しても何ら問題はなさそうなのだが、ここはマナーを守り、信号が変わるまでゆっくりと待ってみる。 そして何気なしに右に目を送ると、木々の生い茂る森の奥に進む一本の細い道を発見した。 「これだ…間違いない…」 その細道を見た瞬間、何故か確信のようなものを感じた。 地理的にそう感じたのか、それとも雰囲気がそう思わせたのか…。 どちらにせよ、“ここだ”とおもった瞬間、ウィンカーを右に倒し、信号が青に変わった瞬間、その細道に向けハンドルを切った。 そこからの道は、先程の広い道とは比べ物にならない程に暗く気味が悪い。 この不気味なまでの暗闇は、心霊スポットへ向かう過程での“演出”としては、十分すぎるまでの強烈さである。 ハンドルを握る手のひらが、汗でくっしょりなのが分かる。 自分の心臓が異様な速さで波打つのが分かる…。 こんな状況下で探索すると思うと、尚更“恐怖”を感じずにはいられない。 ここに来て再び 「やはり止めておこうかな」 と言う思いが強くなる。 そんな思いの最中、左手に等間隔で杉が伸び、その奥に“鳥居”を発見してしまう。 「ここだ…」 そう思った瞬間、情けない話だがその場を通り過ぎてしまった。 車が止めづらい事もあったが、恐怖心に支配され、その場を立ち去ったのが一番の理由。 しかし直後に 「ここで帰るのは余りにも…」 と思い直し、車をUターンさせ再び神社へ向かった。 神社の前に程よい窪みがあり、そこに車を付ければ通行する車にも邪魔にならないであろう。 その窪みに車を横付けし、車中より“鳥居”を眺める。 周囲の木々を遮る様に杉が立ち並び、その遮られた空間の奥は、禍々しいまでの暗闇を私に見せ付ける。 その闇にかき消され、存在は目視できないが、神社は間違いなくそこに存在する。 震える手でカメラを握り、ドアに手をかける。 しかし開けられない。 決してドアが開かない訳ではない。 私の肝っ玉が極小な為、開ける事が出来ないのだ。 呼吸が大きくなる…無意識に深呼吸を始めたらしい。 そして心の中で 「よし!行くぞ!!」 そう叫び、ドアを勢い良く開けたつもりだったが、結果は“コッソリ”であった。 そして次の瞬間、夏特有の湿気を帯びた外気と森の香り、そして様々な昆虫の鳴き声が一気に私を襲った。 耳、そして皮膚全体が、この森に支配されたかのように思える。 目の前に伸びる細道、両脇に茂る杉、そしてその先の闇…。 いよいよその中へ一歩一歩、ゆっくりと足先を進めていった…。 その3へ続く |
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