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■第二十四話
聞こえてくる音 : その4

注:この作品は当サイトのメルマガ「路地裏通信」で公開したものです

■聞き慣れた音


「プー…プー…プー…プー…」


池に来たはずが、何故か山中を彷徨う事となり、ほとほと疲れ果てウンザリしていた時、とても奇妙な音が…

いや、もっと詳しく言えば、その音自体は特に奇妙ではない。
それどころか“馴染みある音”といっても強ち間違いではない程の、何とも聞き慣れた音と言える。

問題は、


“その音が何故この山中で聞こえてくるのか?”


と言う事であり、その問題を深く考えていくにつれ、私の恐怖感と言うか摩訶不思議な気持ちが募っていった。



「プー…プー…プー…プー…」



私の耳を傾けてからも、一向に鳴り止まないその聞こえてくる音を聞きながら、思わず呟いた。



「こ…この音って…」



「この音って、電話の受話器が外れた時に鳴る音だよなぁ…」



そう、先ほどから鳴り続けている音は、例えば相手方が電話を切った時や先方様が留守だったりした時に鳴る


“あの音”


と、そっくりなのだ。



「プー…プー…プー…プー…」



そう考えると、“その音”の発信源を身近なモノから疑うなら、何より自分が所持する


携帯電話


となってくる。
しかし…他の機種の詳細は知らないが、私の携帯は“その音”が、ある程度の回数を数えた後、必ず無音となる。
しかし、現地で先ほどから聞こえてくる音は、少なく見積もっても数分は間違いなく鳴り続けている。



私の携帯ではないはずなのだが…



と思いながらも、客観的に考えてみれば、やはり私の携帯電話から鳴っている可能性が高いと思う。
そもそも付近に電話なんて物が皆無な山中なのだから…。

しかし疑問点は多くある。
上に書いたように、たとえ“あの音”が私の携帯から鳴ったとしても私の携帯は、必ず数秒で無音となる。
そして何より、この聞こえてくる音の大きさ。
仮に私の携帯が“あの音”の発信源だとすると、それにしては余りにもボリュームが大き過ぎる。

もし、実際に私の携帯が鳴ってたとしても、本来ならば、なかなか気づかない程の音量でしかない筈だ。



「プー…プー…プー…プー…」



相変わらず、それなりの音量で“あの音”は聞こえてくる。
一向に鳴り止む気配はない。

私は、上着のポケットに忍ばせた携帯電話を手にとってみた…。



…鳴ってない…



画面を確認してみても、相も変わらずの受け待ち画面だ。
電話を耳に当てても、全くの無音だ。
明らかに私の携帯電話以外から、例の



「プー…プー…プー…プー…」



が鳴っている…

音の発信源など皆無な山中であるにも関わらず…


その5へつづく…


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